吾輩はトラネコなり。
コタツは好きだが、日本の蒸し暑さにはそれほど強くないのだ。
エアコンは命綱。
なのに、最近は停電のウワサをよく耳にするのだ。
なぜだ。なぜなのだ。飼い主はどうしたらいいのだ。
誰か、誰か、教えてはくれまいか…。

ニュースや気象情報を見ながら「“数十年に一度”という言葉、毎年聞くなぁ…」と思っている人も多いのでは…?こうした大きな自然災害の後には停電が発生しやすいといわれています。さて、停電に対して私たちはどう備えるべきなのか、地域や研究機関などで活躍するキーマンに伺います。

今回は、「在宅避難」を想定した備えについて、防災士、管理栄養士の今泉マユ子さんに聞きました。

防災士・管理栄養士 今泉マユ子さん
防災士・管理栄養士 今泉マユ子さん

「停電ごっこ」「断水ごっこ」でシミュレーション

災害への備えというと、防災グッズや飲料水などの備蓄を思い浮かべる人が多いと思うのですが、それだけで安心していいものなのでしょうか。

備蓄だけでなく、「いざ災害が起きた時にどう行動すればいいか」をシミュレーションしておくことが大事だと思います。実は日本では、備蓄をしている人は多くても、いざという時の行動まで想定している人は少ないんですよ。

避難所へ逃げるのか、自宅で生活を続ける「在宅避難」を目指すのか、それによって必要な備えも変わってきます。家の周辺に危険が迫った時は迷わず避難しなくてはいけませんが、避難所は希望する人全員が入れるとは限りませんし、今は新型コロナウイルスの感染リスクもあるため、やはり在宅避難でも大丈夫なように備えておきたいですね。そのためには、今のうちに「災害が起きたら家での生活がどう変わるか」を想像できるようにしておくといいと思います。

Q.災害が起こった時の行動シミュレーション頻度について (SA/n=1,000)

※出典 伊藤忠商事「在宅避難と長期・大規模停電の防災対策実態調査」(2020.2)
※出典 伊藤忠商事「在宅避難と長期・大規模停電の防災対策実態調査」(2020.2)

やっぱり、「在宅避難」の準備は必須だな。
しかしシミュレーションとは、どうやってやればいいのだ…?

普段の生活の中で被災時を想像するのはなかなか難しそうです。オススメの方法があったら教えてください。

学校や職場では防災訓練をしていても、家庭でしている人は少ないですよね。だからといって急に「家庭でも防災訓練を!」なんて言われても、何をしたらいいかわからないという人がほとんどだと思います。そこで私がオススメしているのが「断水ごっこ」と「停電ごっこ」。災害時に在宅避難をすると想定して、その時に困るであろうことを、家族みんなであらかじめ体験しておくんです。

例えば「断水ごっこ」は、備蓄している水だけで調理をしてみたり、丸一日水道を使わない生活をしてみるもの。そうすると、1回の調理で使う水の量や、備蓄している水だけでは洗いものができないことなどがわかります。また、飲料水はどのくらい必要か、生活用水はどんな場面でどのくらい必要か、といったこともわかってくるんですよ。皆さんも実際にやってみると実感されると思いますが、実は生活用水っていくらあっても足りないんです。

そんなに大量の水を備蓄するのは無理なので、そこから「じゃあ歯磨きは水のいらないシート状のものを用意しておこう」「ウエットティッシュはたくさん必要だね」「紙皿もあるといいね」」という感じで、必要な備蓄品が見えてくるわけです。

今泉さん宅の備蓄の一部。生活用水用は空のペットボトルに水を詰め、1・2階のトイレに収納。飲料水用の水は各部屋に分散備蓄。「置き場所は“つくる”ものです」と今泉さん。
今泉さん宅の備蓄の一部。生活用水用は空のペットボトルに水を詰め、1・2階のトイレに収納。飲料水用の水は各部屋に分散備蓄。「置き場所は“つくる”ものです」と今泉さん。

すごい備蓄だ!
「置き場所はつくるもの」…ぐぅの音も出んぞ…。

必要なのは「使うシーンを想定した備え」

もうひとつの「停電ごっこ」はどんなものですか?

まずは夕飯の時だけでもいいので、家中の電気を消した状態で食べてみてください。それだけでも、停電したら生活がどうなるか実感できると思います。本当に何も見えないので(笑)、じゃあ懐中電灯かランタンをつけようということになるでしょう。でも、真っ暗闇だとそれすら探せないんですよ。

そうすると「懐中電灯はいつでも、どこにいても手に取れる場所に置いとかなくちゃいけないな」となって、じゃあ食卓のそばにもトイレにも、家の2階にも必要だねってわかってきます。いざという時のためのグッズは、使うシーンを想定して必要な数だけ用意する、それが本当の意味での備えにつながっていくのではと思います。

ご家庭で「停電ごっこ」をされた時、お子さんたちの反応はどうでしたか?

毎回わりと楽しんでいて、子どもたちなりに新しい発見をしているようです。息子が「本を読むときはランタンがいいけど、歩くときは懐中電灯がいい」と言ったこともありました。また、娘と停電ごっこをしたときは、カセットコンロでレトルトスープを温めてランタンの明かりで食べたのですが、「袋のままスプーンで食べると倒れちゃうから、災害時でもちゃんと食器に入れたほうがいいね」と言っていました。おかげで、家庭の中で必要なものや揃えるべきものが明確になっていきました。

もうひとつ、「停電ごっこ」はお子さんの心の準備にも役立ちます。突然真っ暗闇になると怖がる子も少なくありませんが、一度体験させておくと少し慣れてくれるみたいです。以前、私が停電ごっこを紹介したママ友が、実際にそれをやった後に停電にあったそうなんですが、「いざ停電した時も子どもが怖がらなかった。ありがとう」と言ってくれました。役に立ててうれしかったですね。

「停電ごっこ」でのお子さんの気付きを撮影。やるべきことや、用意しておくことを体感から気付くことが出来るのが「停電ごっこ」のポイントだそう。

「停電ごっこ」や「断水ごっこ」は、次何をすべきかが明確になりますね。

そうなんです。これがシミュレーションなんです。
飲料だけでなく生活用水がどれだけ必要か。どの家電が必須でどのような準備が必要か、を考えていくことが大切です。ご家庭によって対策が変わってくると思います。

「停電ごっこ」おもしろい!
まずは「考える」「想像する」ことが大切ということだな!

今泉さんオススメ!「ローリングストック」とは

最近は、災害への備えに関して「フェーズフリー」という考え方があると聞きます。どういった意味なのでしょうか。

身のまわりにあるものを、日常時はもちろん非常時にも役立てようという考え方ですが、この言葉ってちょっと難しいですよね(笑)。平たく言えば、普段の生活の中でも使えるし災害時にも使える、そういうものを家に置いておくといいよっていうことです。

例えばうちでは、コンセントにさすタイプの停電時自動点灯ライトをあちこちに置いているのですが、これは普段はコンセントに差しっぱなし。充電が切れる心配がないので安心ですし、停電すると自動に明かりがついてくれる優れものなんです。しかも充電台から外せば懐中電灯になるので、私は夜に外に出るときは持って行って、帰ったらまた充電台に戻しています。日常時でも非常時でも使える「フェーズフリーなもの」の一例と言えるでしょう。

食品はどんなものを備蓄しておけばいいのでしょうか。

乾パンに限らず、非常食と言われるものは普段の生活の中ではあまり食べないですよね。私は、備蓄用の食品も、普段の生活の中でも食べられるものを選んでほしいと思っています。ただ、そうした食品は賞味期限もそれほど長くないので、非常食としてしまいっぱなしにしておくのではなく、日常の中で消費しながら使った分だけ買い足していく「ローリングストック」がオススメです。

具体的な食品では、やはり災害時は野菜が不足しやすいので、ビタミン、ミネラル、食物繊維を補える、野菜のジュースや缶詰、レトルトやフリーズドライの野菜スープ、フルーツ缶やドライフルーツなどを多めに備えておくといいでしょう。今は乾燥野菜も意外と種類が豊富なので、スーパーに行ったついでにチェックしてみてください。

今泉さん宅では野菜ジュースなども多めに用意。備蓄品を揃える際には栄養バランスも考えているそう。
今泉さん宅では野菜ジュースなども多めに用意。備蓄品を揃える際には栄養バランスも考えているそう。

備蓄に野菜ジュース!
いいね、いいね。盲点だった。自分や家族に合った備蓄が必要だ。

「備蓄」を無駄にしない方法とは…
後編に続きます

今泉マユ子 さん PROFILE

オフィスRM 代表取締役
防災士・管理栄養士

1969年、徳島市生まれ。管理栄養士として大手企業社員食堂、病院、保育園に長年勤務。食育、災害食、SDGsに力を注ぎ、レシピの開発や全国での講演、テレビ、ラジオなど幅広く活躍。東京消防庁から感謝状5枚拝受。「第3回私のSDGsコンテスト」大賞受賞。著書は「もしもごはん」「防災教室」シリーズなど22冊。近著は「SDGsクッキング」(理論社)。1男1女の母。
(株)オフィスRM

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