吾輩はトラネコなり。
コタツは好きだが、日本の蒸し暑さにはそれほど強くないのだ。
エアコンは命綱。
なのに、最近は停電のウワサをよく耳にするのだ。
なぜだ。なぜなのだ。飼い主はどうしたらいいのだ。
誰か、誰か、教えてはくれまいか…。

ニュースや気象情報を見ながら「“数十年に一度”という言葉、毎年聞くなぁ…」と思っている人も多いのでは…?こうした大きな自然災害の後には停電が発生しやすいといわれています。さて、停電に対して私たちはどう備えるべきなのか、地域や研究機関などで活躍するキーマンに伺います。

今回は、「在宅避難」を想定した備えについて、防災士、管理栄養士の今泉マユ子さんに聞きました。

防災士・管理栄養士 今泉マユ子さん
防災士・管理栄養士 今泉マユ子さん

在宅避難を想定した備蓄法とは…
前編はこちらから

備蓄用の食材は「賞味期限パトロール」を

非常食といえば、普段食べ慣れないものを我慢して食べるイメージですが、今泉さんは普段の食事にも使えるものを中心に備蓄しているそうですね。

私の場合、レトルト食品や缶詰、フリーズドライ食品など、普段の食事で食べておいしいと思ったものをたくさん備蓄しています。日々の食事で食べることで家族の好みも分かりますし、賞味期限を切らすこともありません。それ以外にも、長期保存可能な災害食もありますが、それらも実際に食べたうえで好きなものを備えています。多少値段が高くても普段の食事で食べるわけなので、外食に比べれば安いものです。

そうして、家族にとっておいしいものだけを、できる限り種類豊富に備蓄しておけば、いざという時にも選ぶ楽しみが生まれますよね。また、備蓄品を日常の中で消費しながら、使った分だけ買い足していく「ローリングストック」を実践すれば、災害時にも食べ慣れているものを食べられる、つまり日常を取り戻すことにもつながるのではと思います。

飲食に関する備えでは、食べ慣れたものに加えて、ぜひ「これがあれば日常に戻れる」というものも用意しておいてほしいですね。毎朝コーヒーを飲む人なら、在宅避難が始まってもコーヒーが飲めるように備えておくといいでしょう。うちの場合は、私の朝のルーティンはプルーン、子どもたちはみそ汁なので、どんな状況になってもいつものみそ汁を作ってあげられるように、どちらもしっかり備えています。

「日常を取り戻す」…分かる、分かるぞ!
ミルクを飲むとホッとするし、冬はぬくいコタツや布団が落ち着くなり。

今泉さんはかなりたくさんの備蓄をされているそうですが、賞味期限はどう管理されていますか?

うちでは、本棚や畳の下に、缶詰やフリーズドライ食品、レトルト食品といった備蓄用の食べ物がぎっしり詰まっています。賞味期限は、缶詰は賞味期限ごとに棚を分けて収納する、床下収納では賞味期限ごとにカゴを分けるなどして意識しています。でも、すべてを自分で管理しようとするとストレスになるので(笑)、子どもに「賞味期限パトロール」をしてもらっているんですよ。一定期間ごとに賞味期限が近い食品を全部出してもらって、その日の夕飯にそれを食べるんです。

賞味期限パトロールは、普段料理を担当していない人に頼むといいですね。どこに何があるか私しか知らないようでは、いざという時に家族が困ってしまいますから。

賞味期限に関しては、食品ごとに「よく見える場所に大きく書いておく」を習慣化。すぐ書けるよう、収納棚にはいつもマジックペンが。
賞味期限に関しては、食品ごとに「よく見える場所に大きく書いておく」を習慣化。すぐ書けるよう、収納棚にはいつもマジックペンが。

こんなにでっかく書くのか…でも分かりやすいぞ。
賞味期限や消費期限って、探すの面倒なんだよな。

楽しみにも安心にもつながる「防災の日常化」

確かに、備蓄しただけで安心してしまっては、いざという時に「賞味期限が切れていた」「どこにあるかわからない」ということになりそうです。

その通りです。ですから、ローリングストックや賞味期限パトロールはすごく大事。面倒だなぁと思うかもしれませんが、例えば「毎月、給料日前や年金支給日前の1週間は備蓄品だけで過ごそう!」などと決めてしまえば、家族みんなで楽しく実施できるのではないでしょうか。調理にも備蓄のガスボンベやカセットコンロ、備蓄の水だけを使うんです。

毎月続けているうちに、備蓄している食品のローリングストックができたり、水やガスの節約を工夫するようになったりするうえ、もしものときの練習にもなります。非常時に役立つことは普段の生活でもエコになると実感できると思います。

防災や在宅避難の備えで大事なのは「日常化」なんですよね。特別なものになってはいけないと思います。年1回の防災訓練では非日常になってしまいますから、ぜひご家庭の普段の生活の中で、楽しみながら備えられるように工夫していただきたいですね。

ここまで出来たら少しは安心できるような気がします。

それでも、人間は忘れてしまうんです。我が家では、場所や時間といった災害時の連絡方法を決めているのですが、子供が時間を1時間ズレて覚えていたことがありました。最初は覚えていたので、時間が経つにつれ記憶が曖昧になったんだと思います。でもこういうことってありますよね。「災害は忘れた頃にやってくる」とはよく言われますが、「人は忘れる」「人は慌てる」を前提に、日常で活用できる対策はやっておいて損はありません。

「想定外に弱い日本人」も聞いたことがあるぞ。
「忘れっぽい」「テンパりやすい」といった自分の特徴を認識して対策をすべき!

そうした備えが暮らしの安心につながっていくのですね。最近では、一歩進んだ停電対策として、家庭用蓄電池システムを設置する家庭もあると聞きます。

私もとても興味があります。普段から家の電力として使えるうえに、停電した時には自動的に蓄電池から電力を供給してくれるんですよね。自分でスイッチを押さなくても自動的に切り替わるという点は、かなりポイントが高いと思います。

いくら普段から備えていても、いざとなるとスイッチを押すという行動すら忘れてしまいがちです。私も地震でガスが止まった時、「ガスメーターの復帰ボタンを押す」という手順が頭に浮かばなくて、その日のお風呂は追い炊きができず寒い思いをしました。そこを自動で自立運転に切り替えてくれる蓄電池なら、かなり心強い停電対策になると思います。普段から使えるという点も、まさに「防災の日常化」と言えるもの。そうした備えがあるとより安心ですね。

電気がすぐ使えるようになると、「日常を取り戻す」感じがしていいな。 気持ちが落ち着くと、前向きになれる気がするな。


編集後記

「防災の日常化」。普段から防災を意識しながら生活をしていれば、
災害や在宅避難への心構えも、自然にできていきそうだ。
被災したとき誰もが思うのは、「早く日常を取り戻したい」ということ。
食べ慣れたものや使い慣れたものに加えて、電力もあればどれほど安心なことか。
今泉さんのお話を聞いて、普段からの備えの大切さをあらためて実感したなり。

今泉マユ子 さん PROFILE

オフィスRM 代表取締役
防災士・管理栄養士

1969年、徳島市生まれ。管理栄養士として大手企業社員食堂、病院、保育園に長年勤務。食育、災害食、SDGsに力を注ぎ、レシピの開発や全国での講演、テレビ、ラジオなど幅広く活躍。東京消防庁から感謝状5枚拝受。「第3回私のSDGsコンテスト」大賞受賞。著書は「もしもごはん」「防災教室」シリーズなど22冊。近著は「SDGsクッキング」(理論社)。1男1女の母。
(株)オフィスRM

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