寒い日の強風で停電? ギャロッピング現象について解説

強い寒気が入り込んだ日に強風が吹くと、停電してしまうことがあります。その原因のひとつとなるのが「ギャロッピング現象」です。あまり耳になじみのない言葉かもしれませんが、過去にはギャロッピング現象が原因の大規模停電も発生し、対策も講じられるようになりました。いったいギャロッピング現象とは、どのようなものなのでしょうか。この記事で解説します。

  1. 寒い日は強風で停電が起きる?
  2. ギャロッピング現象とは
  3. ギャロッピング現象による大規模停電事例

寒い日は強風で停電が起きる?

冬、日本には強い寒気が入り込んできます。その寒気は日本海側の地域を中心に大雪を降らせ、送電線にもたくさんの雪や氷が付着します。このような状態のときに強い風が吹くと、停電となる可能性があります。強風によって、ギャロッピング現象が起きるからです。
自然界には、いくつかの条件が揃ったときに生じるさまざまな現象がありますが、ギャロッピング現象もそのひとつといってよいでしょう。
ところで、ギャロッピング現象とは、どのような現象をいうのでしょか。

ギャロッピング現象とは

ギャロッピング現象とは、送電線が強い風にあおられて上下に激しく揺れる現象をいいます。この現象の何が問題になるかというと、大きく揺れることで、上下に張られた送電線同士が接触してしまうことです。接触するとショートし、その結果、電力の供給がストップ、つまり停電を引き起こしてしまいます。

ギャロッピング現象を引き起こす気象条件は、いくつかあります。
ひとつは、かなりの強い風が吹くことです。そうは言っても、台風などで強い風が吹くことは、日本では珍しいことではありません。強い風が吹けば常にギャロッピング現象による停電が起きるかというとそのようなことはなく、もうひとつの条件があります。

それは、送電線に雪や氷が付着することです。「着雪」といいますが、気温が0℃~1℃で、湿り気を帯びたぼたん雪やみぞれの降るときが、いちばん着雪しやすいといわれています。
強風と着雪、このふたつの条件が揃うと、送電線が普段の強風時以上の大きさで上下に揺れ、送電線同士が接触してしまうことになるのです。

ではなぜ、着雪があると、揺れが激しくなるのでしょうか。それは、送電線に付着した雪や氷が、送電線にとって「翼」のような役割を果たすことになるからです。
多くの人は、子どものころ、紙飛行機を作って飛ばした経験があると思います。よく飛ぶ紙飛行機、飛ばない紙飛行機、同じ紙飛行機でもいろいろですが、翼が風を上手に受けたときに紙飛行機は高く舞い上がります。送電線にも同じことがいえます。翼の役割を果たす着雪を伴った送電線は、強い風にあおられ、何もない状態の送電線以上に、上下に激しく揺れてしまうのです。

気温が低いところに湿り気を帯びた雪が降り、さらに強風が吹く――このような条件が揃ったときには、ギャロッピング現象が起こる可能性があることを知っておきましょう。

参考までに、着雪で起こる現象は、ギャロッピング現象だけではありません。着雪した雪が落下すると反動で送電線が跳ね上がって接触する「ストリートジャンプ」、雪の重みで送電線が垂れ下がってしまう「垂れ込み」という現象もあります。いずれも、豪雪地帯では起こる可能性のある現象で、停電の原因になるものです。

ギャロッピング現象による大規模停電事例

では、これまでに、ギャロッピング現象により引き起こされた大規模停電の事例を2つご紹介しましょう。

ひとつは、2015年3月に長野県で発生した大規模停電です。影響は、最大で約38万戸にも及ぶというものでした。
停電が発生してすぐに電力会社が原因究明のための調査に乗り出しましたが、ショートの原因となる落雷、送電線への飛来物の接触などは確認できなかったといいます。一方で送電線にはまちがいなく着雪が見られました。一般市民が激しく揺れる送電線の様子を撮影した画像も入手して調査した結果、ギャロッピング現象が起きたことによる停電だと結論づけられています。

もうひとつは、長野県の大規模停電より10年さかのぼる2005年12月に新潟県で発生した大規模停電です。最大で約65万戸が影響を受けていますから、影響の大きさは長野県を上回るともいえます。
このときは、着雪が起こりやすい0~2℃という気温の時間帯が長かったうえに、かつて経験のないほどの強風、降雪があり、電力を供給する側にとって過酷な気象条件が揃ったとのこと。海に近い新潟県では、風や雪に塩分が混ざり込み、塩害による電気設備の損傷も被害を大きくした原因のひとつといわれています。
完全復旧するまでに2日間ほどを要する大きな停電でした。

そもそも、送電線や鉄塔は、ショートしないように設計されているといいます。それでも起きてしまう接触事故を回避できるように、「スペーサ」と呼ばれる装置の取り付けが進められています。スペーサがあれば、ギャロッピング現象が起きたときでも送電線同士が接触しないため、ショート、ひいては停電を回避することができるというわけです。

停電を引き起こす原因は、さまざまなところに潜んでいます。強風も、そのひとつ。電力会社も対策は行っていますが、私たち一人ひとりも、日ごろから停電に備えておくことが大切です。ローソクや懐中電灯を常備したり、家庭用蓄電池を設置したり、ご自身の家に合った対策を考え、いざというときに安全を確保できるように準備しておきましょう。

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