2020-10-25

土砂崩れの前兆は分かるもの?土砂災害の対策

# 災害対策

台風や集中豪雨など大雨が降ると、土砂災害の危険性が増します。家を丸ごと押し流し、さらにはつぶしてしまう土砂崩れの破壊力を、ニュースなどで目にしたことのある人も多いのではないでしょうか。一瞬で襲いくる土砂崩れから身を守るためには、その前兆を知り対策をとることが必要不可欠です。この記事で、わかりやすく解説します。

日本では土砂災害が発生しやすい

急な傾斜の山が多い日本は、地質の状態もヨーロッパなどにくらべると不安定で、多くの断層が存在しています。そもそもが、崩れやすい地質なのです。しかも日本には、そんな崩れやすさを刺激する要因があります。

ひとつは、活火山が広く分布していること。火山の噴火の際に降り積もった火山灰は土石流の原因となることがあります。さらに、世界の中では地震も多く、地面の奥深くを揺り動かすことが崩れやすい地質を刺激する要因となります。
台風も要因のひとつです。日本は台風の通り道になることが多く、近年は集中豪雨に見舞われることも珍しくなくなりました。大量の雨水や、雨水により増水した川の氾濫により、もろい地盤が崩れやすくなります。
日本は、土砂災害が発生しやすいいくつもの要因を抱えた国なのです。

土砂崩れの前兆は分かるのか

一瞬のうちに家屋をのみこんでしまう土砂崩れですが、前兆をとらえれば、避難するなどの対策がとることが可能です。
土砂災害は次の3つに分類できますが、それぞれの前兆を確認しておきましょう。

土石流

土石流は、山の斜面にある石や土砂、山を流れる川底にある石や土砂が、大量に降った雨の影響を受け、一気に下流に押し流されていく現象のこと。発生する規模にもよりますが、スピードは時速20~40kmともいわれ、一瞬のうちに家や田畑をおおいつくすほどの破壊力を持っています。

前兆として挙げられるのが、山鳴り(土石流などによって発生した音が広範囲に反響したもの)、山の木が裂ける音、石がぶつかり合う音が聞こえてくることです。近くに川が流れている場合は、突然川の水が濁り始め流木が混ざる、大雨であるにもかかわらず川の水位が下がるという様子も見られます。付近に腐った土のにおいが漂うことも前兆のひとつといってよいでしょう。

崖くずれ

崖くずれは、急な斜面の地表に近い部分にある土が、多量の雨水、地震などの影響でゆるくなり、いきなり崩れ落ちてくる現象です。特徴は、短時間のうちに猛スピードで崩れ落ちること。人家の近くで発生すると逃げ遅れてしまうこともありますし、勢いよく崩れた土砂が遠方にまで達することもあります。

前兆として挙げられるのは、地鳴りです。また、湧き水が濁ったり止まったりする、逆に崖から水が湧き出てくるといったことも前兆といえます。崖にひび割れができたり小石がいくつも落ちてきたりするときも注意しましょう。

地すべり

地すべりは、斜面の一部もしくは全体が、ゆるやかに斜面下方に移動してしまう現象で、地下水や重力が影響しています。大量の土塊が移動するため、非常に大きな被害をもたらす現象です。

おもな前兆として挙げられるのが、地鳴りや山鳴りがすること。地面にひび割れや陥没が見られたり、亀裂や段差が生じたりすることも前兆のひとつです。また、樹木が傾いてくる、斜面から水が噴き出してくるといった現象、井戸や沢の水が濁ることも、何かしらの変化が起きる兆しといえます。

国や地方自治体の土砂災害の対策

土砂災害は日本の国土が持つ脆弱性によって引き起こされるため、国や地方自治体でも、さまざまな対策をとっています。
例えば砂防堰堤(さぼうえんてい)を設置して、崩れてきた土砂が流れ落ちるのを防ぐこと。「砂防」は、土砂災害から人々の命を守るための工事や仕事のことです。山の斜面に木を植えて地表の土砂が崩れないようにするなどの対策をするほか、土砂災害が起こりやすい場所の点検、土砂災害の発生状況の監視をしたりしています。

土砂災害対策として個人でできること

国や地方自治体でも対策は講じていますが、身を守るためには一人一人の意識や心がけも大切です。

土砂災害の危険がある地域は「土砂災害警戒区域」「土砂災害危険箇所」として、国土交通省・砂防部が公開しています。こういったWEBサイトを利用して、自分の住んでいる地域や職場が土砂災害警戒区域に該当していないかを確認しておきましょう。もしも該当することがわかった場合は、避難場所や避難経路もあわせて確認するようにしましょう。
また「土砂災害警戒区域」に指定されていない場所でも、近くに「がけ地」や「小さな沢」などがある場合は、災害発生の危険性があることを覚えておきましょう。

また、大雨になり、土砂災害発生の危険性が高まると「土砂災害警戒情報」が出ます。情報は気象庁のHP、都道府県の防災に関するHPのほか、テレビやラジオの気象情報でも発表されるので、状況に応じて確認するようにしましょう。
なお、警戒レベルが4になると市区町村から避難勧告が出ます。そちらの情報も随時確認し、指示に従ってください。

ただし、情報が出るまでには多少のタイムラグが生じます。もし、先ほどお伝えしたような前兆を察知したときには、近所の住民と声を掛け合い避難したほうが安全です。
また、外に出て移動することが困難な状況になってしまったら、家屋の上の階に移動する垂直避難をして状況を見てください。

警戒区域外でも油断は禁物

自宅や職場が警戒区域に入っていない場合でも、災害に対する備えはしておきましょう。近隣で土砂災害が発生すると停電や断水が起き、その影響を被ることがあるからです。
土砂災害の概要や前兆、対策について解説しました。国や地方自治体でも、土砂災害を防ぐための対策はとっていますが、すべてを網羅することは難しい面があります。だからこそ、私たち一人一人の防災意識が大切です。自分たちができることを確認し、土砂災害に備えていきましょう。