2019-11-27

注意が必要?仮想蓄電サービスのメリット・デメリット

# 太陽光発電の基礎知識

2019年11月から順次終了を迎える太陽光発電(再生可能エネルギー)の固定価格買取制度(FIT)。該当する家庭は2019年だけで50万件以上にもなるといわれていて、多くの家庭が余剰電力の使い方や売り先を検討しなくてはいけなくなります。こうした「卒FIT家庭」に対する新しいサービスとして、主要電力会社の多くが提供を開始したのが「仮想蓄電サービス」です。
今回は、FIT終了を迎える前にきちんと理解しておくべき「仮想蓄電サービス」について、そのメリットやデメリットを詳しく解説していきます。

仮想蓄電サービスとは?

家庭用の太陽光発電システムで発電した電力を売電する場合、固定価格買取制度(FIT)によって、10年間は固定価格での買取が保証されていました。この制度は2009年に導入されたため、10年目にあたる今年11月からは、この固定価格買取制度(FIT)の保証期間が終了する家庭が現れ始めます。

これまで高値で売電することを保証していた制度がなくなることで、買取金額が大幅に下がってしまう、買い取ってもらえなくなってしまうなどの問題が発生する可能性があります。これがいわゆる「2019年問題」や「卒FIT問題」と呼ばれているものです。そして、この問題への対策として、各電力会社によって新たに始められた取り組みが「仮想蓄電サービス」です。

関西電力が提供している「貯めトクサービス」や、四国電力の「四電ためトクサービス」、中国電力の「ぐっとずっと。グリーンフィット」などがこれに該当します。これらのサービスでは、契約している家庭の余剰電力を仮想的に預かり、発電が行われない夜間などの電力として提供します。

仮想蓄電サービスの仕組み

仮想蓄電池サービスのプラン内容は各電力会社によっても細かく異なりますが、基本的な仕組みは以下の通りです。

余剰電力を預ける

「仮想蓄電サービス」では、家庭で消費しきれずに発生した余剰電力を契約している電力会社に預かってもらうサービスのことです。「預かる」といっても、あくまでも仮想的に預かるのであって、実際に電力会社の所有する蓄電池などの設備で電力を預かるわけではありません。では、電線を通じて電力会社の送配電網に送られた余剰電力はどこへ行くのかというと、近隣で電気を使っている家庭で使われるのです。

預けた分の電気を使う

仮想蓄電サービスでは送配電網に流した電気の量をカウントして、仮想的に預けた電気の量を把握しています。そして、預けたのと同じ量の電力を自宅で無料もしくは割引価格で利用したり、相当分を電気料金から差し引いてもらったりします。電力会社では預かる電力の上限をそれぞれに設定しているケースが多く、上限を超える余剰電力が発生した場合には買取などの対応が設定されています。

仮想蓄電サービスのメリット・デメリット

卒FIT問題の対応策として注目されている「仮想蓄電サービス」ですが、利用をする場合はそのメリットとデメリットを正しく理解しておくことが大切です。

メリット

太陽光発電で発電した電力は、原則として発電すると同時に使わなければいけないため、発電が行われない夜間などに使いたい場合には、昼間に発電した電力を貯めておくための蓄電池が必要になります。

蓄電池を設置するにはコストがかかります。一方、仮想蓄電サービスでは蓄電池を設置する必要はなく、仮想的に預けた電力を発電が行われない時間帯に使用することができるのが最大のメリットです。

また、電力の買取価格が大幅に減少する卒FIT後は、売電による収入を得るよりも仮想蓄電サービスを利用する方が、節約効果の高くなるケースが多いのもメリットの一つといえるでしょう。

デメリット

家庭用の蓄電池などを導入して実際に蓄電した場合は、停電などの災害時に電力を確保することができます。しかし、仮想蓄電サービスを利用した場合、それはあくまでも仮想的に電力を預けているだけなので、自然災害などで停電が発生しても電力の供給を受けることができません。経済的なメリットが大きい一方で、非常用電源として活用できないという点は大きなデメリットといわざるを得ないでしょう。

また、各電力会社の仮想蓄電サービスを利用するためには月額などの利用料金がかかるのが一般的です。利用料は預かる電力の上限によっても異なり、例えば関西電力の「貯めトクサービス」では、50kWhで月額800円、150kWhで月額2350円、無制限は月額5000円となっています。発電量によっては費用対効果が悪くなってしまうケースもあるため慎重に検討する必要があるでしょう。

固定価格買取制度(FIT)終了後の対応策として多くの電力会社が提供を始めた「仮想蓄電サービス」。サービス名から誤解してしまいそうですが、蓄電池の代わりになるサービスではありません。そのため、自然災害などによる停電時の非常用電源にはなりませんが、卒FIT後の売電収入の大幅な減少をカバーするための対策が目的であれば利用してもよいかもしれません。これから卒FITを迎えるご家庭は、メリット・デメリットを理解した上でしっかり検討しておきましょう。