2022-07-19

防災のプロが家庭用蓄電池のあるお宅を訪問!(前編)エアコン室外機よりも静かな音にびっくり

# 停電の注意点

吾輩はトラネコなり。
コタツは好きだが、日本の蒸し暑さにはそれほど強くないのだ。
エアコンは命綱。
なのに、最近は停電のウワサをよく耳にするのだ。
なぜだ。なぜなのだ。飼い主はどうしたらいいのだ。
誰か、誰か、教えてはくれまいか…。

ニュースや気象情報を見ながら「“数十年に一度”という言葉、毎年聞くなぁ…」と思っている人も多いのでは…?こうした大きな自然災害の後には停電が発生しやすいといわれています。さて、停電に対して私たちはどう備えるべきなのか、地域や研究機関などで活躍するキーマンに伺います。

今回は、防災食アドバイザーとしても活躍し、コラム「防災のプロが『在宅避難の備え』教えます!」でも登場いただいた今泉マユ子さんが、太陽光パネルと家庭用蓄電池を設置しているお宅を直接訪問!

防災士・管理栄養士 今泉マユ子さん

防災士も本気で悩む「電力の備え」

普段から水や食料の備蓄はもちろん、いざというとき慌てずに済むよう、家族と一緒に「停電ごっこ」や「断水ごっこ」をしたり、備蓄品の「賞味期限パトロール」をしたりと、在宅避難を想定してさまざまなことを実行しているという今泉さん。

「でも、ずっと気になっていたことがあって……。それは“電力の備え”なんです。停電が長期間続いたらどうすればいいんだろう、夏場にずっとエアコンが使えなかったらどうなるんだろうって不安に思っていました。そんなときに家庭用蓄電池の存在を知って、本気で導入を考えるようになったんです」

実は今泉さん、前回の取材後、こんなことを語ってくれていました。

お!吾輩も見てみたいと思っていたぞ!これは必見!

電力も「見える化」したい

──「防災に強い住宅」とはどんな住宅なのでしょうか?

一番大事なのはやはり立地だと思いますが、それ以外では、耐震性がしっかりしている家、家具などが倒れてこない家が「防災に強い住宅」と言えるのではないでしょうか。少なくとも、災害時にはスムーズに外に出られるよう、室内から玄関への動線を確保しておいたほうがいいでしょう。ですから、普段から家の中を整理整頓しておくことが大事ですね。その意味では、「防災に強い家」は「整理整頓されている家」でもあると思います。

今泉さん宅の一室。大量の備蓄品がありながら、しっかり整理整頓されている。

──ほかにも、家の中ですぐにできそうなことはありますか?

家の中のものを、すべて見える化しておくといいと思います。うちでは、備蓄品には「3つの見える化」を徹底しているんですよ。1つめは「備蓄場所の見える化」。家族全員がいざという時に自分で見つけて食べたり使ったりできるように、目に触れる場所に置く、ケースに入れるなら中身がわかるようにラベルを貼る、日常生活の中でも家族みんなで食べたり使ったりしていく、ということです。つまり「家族に見える化」ですね。

2つめは「賞味期限の見える化」です。うちでは備蓄用の食品ひとつひとつに、よく見える場所にマジックで賞味期限を書いています。(参考:防災のプロが『在宅避難の備え』教えます!

3つめは「食べ方の見える化」です。わが家では、家族全員が普段から備蓄品も食べるようにしていますが、そうでないご家庭には、アルファ化米やフリーズドライ食品の作り方や食べ方がわからないというお子さんもいるのではないでしょうか。それではせっかく備蓄品があっても、いざという時に自分で食事ができませんよね。
※炊飯後に乾燥させて、お湯や水を注ぐだけで食べられる。非常食や備蓄食料として利用されている。

備蓄用のレトルト食品などは、本と一緒に本棚にも並べて「備蓄場所の見える化(家族に見える化)」を実践。

たしかに備蓄をしていても、いざという時に場所が分からなかったり、使えなかったりしたら、意味がないな。

──備蓄品のほかに「見える化」しておいたほうがいいことはありますか?

災害時に多くの人が困るのはやはり停電です。

先ほどお話しした3つの見える化に電力をプラスして、「4つの見える化」ができていると、それだけ安心度も高まります。生活する上で何にどのぐらいの電力が必要なのか、あらかじめ「見える化」しておくことが大事だと思います。照明や冷蔵庫、エアコンなど、それぞれがどのぐらいのワット数を要するのか知っておけば、在宅避難時に蓄電池などを使う際も、何を優先するか取捨選択できますよね。

実は、私も今リフォームを考えているところで、家庭用蓄電池にも興味津々なんですよ。停電時はもちろん、日常の生活電力も供給してくれると聞いているので、設置すればより安心して暮らせそうです。予算やコストパフォーマンスも考えながら、しっかり検討していきたいと思います。

こんなに防災に詳しい専門家でも、「電気を備蓄する」というのは、課題になっているんだな。

念願の「お宅訪問」で蓄電池の実物を見学!

このように語っていた今泉さん。その後、実際に家庭用蓄電池の導入に向けて、メーカーのサイトなどで自分なりに調べてみたといいます。でも、機械オンチなこともあって理解しきれない部分も多く、逆に疑問だらけになってしまったのだとか。

「実際に設置している人に話を聞きたい!現場を見せてもらいたい!」という思いが募っていたところ、ついに念願のお宅訪問が実現。「スマートスター3」を設置しているお宅に伺うことになりました。

訪問したのは、横浜市青葉区のN様邸。30代の若いご夫婦と、4か月の男の子の3人家族です。現在お住まいの一戸建ては、2021年の春に中古で購入。その後、リフォームの一環として、家庭用蓄電池の中でも特に容量が大きい「スマートスター3」を太陽光パネルとともに設置したそうです。

これらの設備でためた電力は、毎日の生活で使っているほか、余った分は電気事業者に買い取ってもらう「売電」に回せるため、ちょっとしたお小遣いの足しにもなっているということでした。

まずは、現物がどんな見た目なのか、どこにどう設置されているのかを見学させてもらいました。N様邸は、北側に玄関、南側に庭、西側に駐車場という立地。スマートスター3は屋外東側の通路に設置されていて、今泉さんはそのシンプルな見た目に驚いた様子でした。

「想像よりずっと薄くてシンプルなデザインですね! なのに頑丈そうで安心感がありますね。地震で倒れてしまうかもといった不安はありませんか? また、設置場所に制限はあるのでしょうか? 工事は大変でしたか?」と、さっそく質問攻めに。

分かる分かる!聞きたいことがいっぱいあるのよ

「スマートスター3」を設置しているN様邸。今泉さんの疑問に、奥様が優しく答えてくれました。

設置場所やメンテナンスは?静音性は?

こうした質問に、奥様は笑顔でひとつひとつ丁寧に答えてくれました。

「コンクリートの土台にアンカーボルトで固定してあるので、転倒の不安は感じていません。設置場所は壁から少し離す必要があって、直射日光は避けた方がいいと言われました。この場所は時間によって日が当たるのですが、オプションで木製の囲いを作ってもらい、普段はそれをかぶせておくということで解決できました」

工事期間は、蓄電池の設置は1日、太陽光パネルは足場の設置も含めて2日程度だったそうです。ちなみにN様邸では、家の外観に響かないよう、太陽光パネルと蓄電池をつなぐ配線類を、蓄電池とは逆の西側に集約。

太陽光パネルで発電した電力を家庭で使用できる電力に変換する装置「パワーコンディショナー」も西側に設置し、そこから床下に配線を通して、東側にある蓄電池とつないでいました。

「太陽光パネルからパワコン(パワーコンディショナー)に電力を送って、そこから家の中や蓄電池に電気を送り込んでいます。パワコンと蓄電池との距離は短い方が負荷が少なくていいそうですが、私は家の見た目も大事にしたかったので、配線類は西側に集めてもらいました」と奥様。

考えることがこんなにあるんか…!

N様邸。家の外観を邪魔しないよう、配線類は西側の壁面に集約しています。

丁寧な説明に、今泉さんも自宅に設置したときの様子をイメージできてきた様子。続けて「でも、まだ気になることがあるんです。蓄電池のメンテナンスは大変ですか? あと、音がご近所の迷惑になったりはしないでしょうか?」と質問しました。

奥様によると、メンテナンスは設置して以来何もしていないとのこと。それでも、不具合を感じたことはまったくないそうです。音もエアコンの室外機より静かで、家にいて気になったこともなければ、ご近所から苦情が出たこともないと教えてくれました。

実際に蓄電池に耳を寄せてみた今泉さん、「本当に静か!」と感動。停電に備えようと、ポータブル蓄電池や発電機を試したこともあったそうですが、使い方がよくわからないうえに作動させたときの音が大きくて悩んでいたのだと言います。「これなら安心です。おかげさまで気がかりだった点が解決しました」と、うれしそうでした。

念願のお宅訪問が叶ってうれしそうな今泉さん。「お話を聞いて気がかりが解決しました!」と大喜び。

うんうん。音とか、メンテナンスとか、外観とか…ご近所付き合いもあるから色々気になる気になる。
後編ではお家の中へお邪魔させてもらうのだ!

後編に続きます